もう旧聞になってしまったが、先月末、iTunes Music Storeでの音楽販売が、10億曲を突破した。いうまでもなく、iTMSの革命は、音楽のダウンロード販売の成功にあるが、コンテンツ流通/配信という点で見ると、アルバムではなく、1曲1曲での販売を可能にした点にある。アーティストやレコード会社の意図ではなく、ユーザーが聞きたい曲だけを買えるということ、これである。実は、音楽を聴くというレベルでごく普通に行われていたことが、販売/購入のレベルで、ようやく行われるようになった、ともいえる。
B3 Annexでは、以前、「Future of Media、4つの法則」というエントリーで、「マイクロチャンク化せよ(コンテンツを最小単位にまで切り分けて提供せよ)」などで始まる4つの法則を紹介したが、今回は、この「マイクロチャンク化時代のコンテンツ戦略について、より詳しく紹介している「TV News in a Postmodern World The Remarkable Opportunities of Unbundled Media」(by Terry Heaton 2005/11/1)を取り上げたい。
ここでは、「Bundled Media」と「Unbundled Media」という表現が出てくるが、なんのことはない。「Bundled Media)(バンドルド・メディア)」とは従来のメディアで、テレビは番組とCMが「抱き合わせ」になっており、また、アルバムは、曲と曲が「抱き合わせ」になっている。これを、「脱・抱き合わせ」化するのが、「Unbundled Media(アンバンドルド・メディア)」で、それは、「マイクロチャンク化」と意味的には同じである。
では、その「脱・抱き合わせ(アンバンドルド)」メディアの中で、コンテンツを最小単位に切り分けて提供するのはいいが、そこでいかに商売を成立させるか。Terry Heaton氏は6つのモデルを提示する。
(以下、B3 Annex抄訳で)
TV News in a Postmodern World The Remarkable Opportunities of Unbundled Media」
(by Terry Heaton 2005/11/1)
1)Ads in or around the items.
広告を入れ込む/広告で包む
このモデルは、ViacomがComedy CentralやMTV Overdriveで展開しているもので、既存のウエブサイトでのストリーミング動画でも数多く採用されているレベニューモデルである。単純に、脱・抱き合わせ化されたコンテンツに広告を付けるもので、難しいことがあるとすれば、ユーザーがどれだけの長さの広告に耐えられるか、ということぐらいだろう。これは、「本編」の長さに依存するようだ。たとえば、90秒程度の動画クリップには、7〜12秒が理想的と思われる。
このような本編に付加するタイプの広告を売りたいという欲求が、出版系メディアをオンラインビデオビジネスに進出させている。通信社のAPが企業会員向けに動画を提供するのに熱心なのは同じ理由である。
メディア企業にとって、この戦略は、論理的な動きに思えるが、実は、すでにあるものを再利用しているのがほとんどでもある。堅実な収入源になるかもしれないが、純粋なアンバンドルド・メディア戦略には、ほとんど貢献しない。
ある動画を特定のPlayerでしか再生されないようにすることは(訳注:たとえば、MTV Overload内でのみ再生できる動画)、単に別の抱き合わせを作っているにすぎないことを知るべきだ。ユーザーが自分のプレーヤーや自分のサイトにembedされた状態で再生できないようなら、それは、結局のところ、アンバンドルド・メディアではない。自社のサーバーからファイルを再生するようにすることはできて、それ以上には、脱抱き合わせメディア世界に参加していることにはならない。つまり、私たちは、自分で思う以上にアンバンドルド化しないことには、アンバンドルド化したことにならない。新しいパラダイムは、想像以上に深いところに私たちを連れて行こうとしている。
2)Expand distribution channels and the number and type of items offered.
流通チャネルを広げ、提供するアイテムの数や種類を増やす
広告をアイテムに付加すると並んで、論理的なステップは、脱抱き合わせするアイテムを増やすだけでなく、種類も増やすことでスケールアップすることである。これは、典型的なマスマーケット型の発想であるが、今日の脱・抱き合わせメディアでも通用する。たとえば、普通のテレビ局のRSSフィード提供ページと、CNNやMSNBCのそれを比べてみよう。普通の局は、ニュースや気象情報、スポーツのRSSぐらいは提供しているかもしれない。対して、CNNは15ものフィードを提供しており、MSNBCに至っては、28フィードもあり、そのうち5つは、ビデオフィードとなっている(訳注:MSNBCのビデオフィードは、video podcastではなく、動画ニュースの更新情報)。アンバンドルド世界で勝負するには、今後は、ニュースや気象情報、スポーツの分野を超えて発想する必要がある。
3) Charge for some items.
いくつかのアイテムは有料にする
これもアンバンドルド・メディアに移行する明確な手法だが、注意深く進めないといけない手法でもある。自社が得意とするニッチなコンテンツ分野があったり、広告収入以上にマネタイズできると思うエクスルーシブな素材がある場合、いくばくかの料金を徴収しようと思うだろう。The New York Timesによる有料記事サービス "Times Select"の評価については、まだ定まっておらず、よって、この手法については、まだあまりケーススタディはない。
4)Ads as items.
広告もアイテムとして取り扱う
たとえば、アンバンドルド・メディアのアイテムがRSSフィードとして配信されているとする。その中で、収入を得る方法としては、広告そのものをRSSフィードのひとつの項目として配信してしまうことが考えられる。
オンライン広告は、大概印刷広告であり、RSS広告であっても、同じであった。つまり、印刷広告は、コンテンツであるテキストを囲んで配置される。結果、ユーザーの注意を喚起するさまざまな手段に訴えることになる。一方で、広告をアイテムのひとつとして取り扱うことで、広告がコンテンツの流れの一部になっている放送広告の手法をとることになる。
(ビデオ再生できる)新しいiPodの登場により、ネット上で配信できるさまざまなインフォマーシャルが出現していおり、これは、ローカルメディア会社の新たな収入機会となるだろう。
5) Helping users re-bundle.
ユーザーが自在にコンテンツを組みなおすことを支援する
ローカルメディア会社にとって、アンバンドルド・メディアの世界での最もロジカルな動きがあるとすれば、それは、ユーザーが自在にコンテンツを組みなおすことを支援するビジネスを行うことだる。自社ブランドのRSSリーダーやローカル情報のアグリゲータがこれを行うビークルであり、メディア会社は、コンテンツ組み換えを行うこれらアプリケーションに向かって広告を配信する。
ロサンジェルスタイムズ紙は、自社ブランドのRSSリーダーを提供しており(訳注:実際にはプライベートベータと思われる。同様のRSSリーダーはイギリスのガーディアン紙が提供中)、また、ローカルテレビ局のブログ、"Nashville Is Talking" や "The Bay Area Is Talking" がローカル情報のアグリゲータサイトの一例である。
(B3 Annex脚注)
(自社ブランドRSSリーダーの意味を、ユーザーが自在にコンテンツを組みなおすことを支援するツール、としているところは秀逸である。
つまり、、自社ブランドRSSリーダーにプリセットされる自社のRSSフィードというのは、さまざまなフィードと勝手に組み合わせられる前提の存在であるのだ、ということだ。もともと、提供しているRSSがどんなフィードと一緒に見られているか、は提供側にはわからない。従来のメディア的には、この地点でかなり居心地の悪さを感じるはずだが。しかし、そこで終わらないで、自らコンテンツがユーザーによって勝手に組みなおされることをも支援する、という地点まで踏み込むこと。
これがきっと、アンバンドルド・メディアの正しいあり方だと思う。)
(B3 Annex脚注 終わり)
6)Ad feeds.
広告のフィード
アンバンドルド・メディア世界におけるローカルメディア企業のもっとも大きな可能性は、ローカル広告コミュニティにおける会社の評判を利用した新しいビジネスを創出することである。
しかし、残念ながら現実には、放送局や新聞社は、ギリギリなところでの品位を確保するのに躍起のために、新しいビジネスを創出する機会は、ほかの非メディア系の人々の手に渡ってしまっている。
RSSは、アンバンドルドな世界をよく知る人々にとっては、自分たちのあり方そのものであり、日常的なことであるが、従来型のメディア会社は、RSSは自分たちのコンテンツを届ける方法としか考えない。わたしちたちが作るものすべてが、アンバンドルになる世界では、電波塔や新聞配達人(訳注:従来のコンテンツ伝達方法)の先にある可能性を見出すことのほうが容易ですらある。わたしたちのコミュニティでのコマースのために、どのように、アンバンドル化を可能にするテクノロジーやシステムを使うか、考える必要がある。
メディア会社が作り出すすべてのアンバンドル可能なコンテンツが、流通可能で、コンシューマサイドで組み合わせ可能になるため、ローカルなスマート・アグリゲートサイトが無数に登場できるようになる。たとえば、インテリジェントな健康情報アグリゲータを考えてみると、健康系のコンテンツをさまざまなソースから集め、そのコンテンツをRSSでほしいひとに配信する。よって、コンシューマがコンテンツを組みなおすときには、メディア企業によって運営され、宣伝される新たなビジネスが提供するアイテムを加えることもできるようになる。
RSSやコンテンツの配信は、ビジネス界では知られていなかったわけではない。ゴルフ用品メーカーは、製品に興味のある人向けにRSSフィードを提供しているが、このモデルは、地元の小売店レベルにもすぐに使えるものである。複数の小売りビジネスのフィードをアグリゲートするのは、ローカルメディア会社にとっては、自然な発想であるが、しかし、その前に、誰かがフィードを用意しないといけない。これを実現する人は、コミュニティにおいて、著しく優位な立場になるだろう。
もちろん、テクノロジーの進歩にとって、最終的には、フィードは直接コンシューマーに届けられることになるが、さまざまなフィードをアグリゲートする価値を過小評価してはならない。うまくフィードをアグリゲートする人が、将来の価格決定者になっているっことだってありえるのだから。
<B3 Annexでの関連エントリー>
B3 Annex: Future of Media、4つの法則


文中の「ローカルメディア」という言葉に少し違和感を感じ、原文を当たってみたのですが、この文章の筆者はローカルTV局などを顧客とした経営コンサルタントのようですね。確かに米国のローカルメディアのウェブサイトには充実しているものも多く、今後の方向性を示してくれるこうしたコンサルタントへに対する要求水準が高いのもうなづけます。
Posted by: toshi | March 09, 2006 at 08:13 PM