BBCのMark Thompson会長は、先週、、BBCのデジタル戦略「Creative Future」構想を発表した。BBCがデジタル戦略を発表するのは、少なくとも2度目で、今回は、2012年のBBCを想定し、「デジタル時代の第2幕に対応する」ことが謳われていることから、「BBC2.0」を目指すものであるとの声もある。
Mark Thompson会長によるスピーチの全文はこちら(Guardian紙による)。
MediaGuardian.co.uk : BBC Creative Future: Mark Thompson's speech in full
Mark Thompson氏によると、こうしたクリエイテイヴィティについての戦略が必要なのは、視聴者が変わっている、技術が変わっているからによる、という。
「Creative Future」構想は、昨年から1年にわたって、全社的に協議されたもので、会長のスピーチに続いて、担当幹部とビデオによる説明があったようだ。
以下、Thompson会長スピーチの一部から。
"On-demand changes everything. It means we need to rethink the way we conceive, commission, produce, package and distribute our content. This isn't about new services it's about doing what we already do differently."
「オンデマンドがすべてを変える。つまり、私たちが、コンテンツを発想し、委託し、制作し、パーケージし、配給する方法について再検討しなければならないということだ。これは、新しいサービスを行うということではなく、私たちがこれまでに行っていることを違った方法で実現するということだ
"The BBC should no longer think of itself as a broadcaster of TV and radio and some new media on the side. We should aim to deliver public service content to our audiences in whatever media and on whatever device makes sense for them, whether they are at home or on the move."
「もはや、BBCは、自身をテレビやラジオやこれに付随するニューメディアサービスをを行う放送局と考えるべきではない。私たちの目的は、あらゆるメディアを使って、あらゆるデバイスに向かって、公共サービスを視聴者に届けることにあるべきなのだ」。
"This new digital world is a better world for public service content than the old one. "
by Mark Thompson ,BBC Director-General「このデジタルな世界は、公共サービス、コンテンツにとっては、旧来な世界よりも、素晴らしい世界である」。
(以上、BBC会長 Mark Thompson氏のスピーチより)
構想の中で、いくつか特徴的な記述を以下にピックアップする。
・制作の段階からさまざまなアウトプットを想定する
・テレビ番組は、一度放送して終わりのものではなく、何度も再利用されるもの
・ユーザーは、ただ番組を見るだけの存在ではない
・bbc.co.ukのリニューアルし、CGM対応、動画対応する
・ティーンズ向けのブランドを確立し、BB、テレビ、ラジオで配信する
・報道のコアをBBC News24に集中させる。
・マルチプラットフォームな音楽戦略を立案する
・ドラマのラインナップを削減し、ロングランさせる
・自分たちの歴史を記録できるEyewitnessプロジェクトを始動する
「Creative Future」構想のうち、ニューメディア担当幹部のAshley Highfield氏が行った'Beyond Broadcast' は、具体的な将来像を描いている点ではハイライトといっていいだろう。
そのキーワードは、「Find、Play、 Share」である。
Playの部分を担うのが、昨年11月から今年2月までに行われたiMPであり、これは、名称が、MyBBCPlayerから、BBC iPlayerと変更されている。これによって、放送から7日間までなら見逃した番組をダウンロードして視聴できる。
Findでは、過去にさかのぼっての、番組リストの公開(検索可能なリスト)があげられる。今回、1937年にさかのぼる100万もの膨大な番組リストが公開された。(残念ながら、動画はない)
BBCの番組リスト BBC Programme Catalogue
Shareについては、以下のように述べている。
"The 'Share' philosophy is at the heart of bbc.co.uk 2.0. We are looking to a world where you could share BBC programmes, your own thoughts, your own blogs and your own home videos. It allows you to create your own space and to build bbc.co.uk around you."
by Ashley Highfield, BBC Director of New Media & Technology
「Shareの哲学は、bbc.co.uk 2.0のコアである。BBCの番組や、あなたの考えやブログ、ホームビデオをシェアできる世界を想定している。これによって、あなた自身の空間を作ることができ、あなた好みにbbc.co.ukを組み立てることができる」。
(BBCニューメディア幹部 Ashley Highfield氏)
つまり、bbc.co.ukを、MySpaceのようなUser Generated Contentを可能にするサイトにリニューアルするという。これに関連して、
Web2.0的な手法で、BBCオンラインを改良するコンペを開始した。
インターネットの便利なところだけ利用して、組織や仕事の仕方は旧来のまま、というのは、本質的にありえない、とこれまで私は述べてきたが、BBCの最近の動きは、今回の発表もあわせて考えると、こうした「インターネットの劇薬性」をよく理解した動きだといえる。
そして、もはや、インターネットと真剣に向き合わないと生き残れないということを、BBCは組織体としてどこの放送局よりも早く理解した、ということだ。
<関連リンク>
Thompson会長のスピーチ全文 MediaGuardian.co.uk : BBC Creative Future: Mark Thompson's speech in full
BBCプレスリリース Creative Futureについて
BBCプレスリリース - Creative Futureの詳細について
BBCプレスリリース - BBC's Director of New Media & Technology defines vision for the future
Comments