ハリウッドから見たYouTubeの著作権違反問題について、New York Timesの記事"Hollywood Asks YouTube: Friend or Foe?"が面白い。
記事を読むと、私たちが思っているほど、コトは単純(?)ではないことがわかる。
記事は、ラッパーEminemの映画「8マイル」から始まる。つい最近まで、映画「8マイル」は12本にわけてYouTubeにアップされていた。映画をアップした18歳の少年は、映画を交換する友達のためにアップしたと答えているという。
当然、映画を配給したUniversal Picturesの親会社NBC Universalは、この動きを快くは思っておらず、ある記者の通報がきっかけで、この一連の動画を取り下げさせたという。
NBC Universalには、こうした著作権違反の動画を探して、取り下げさせる専従の社員が3人いて、毎月1000以上の取り下げ要請をYouTubeに送るという。
しかし、当然、取り下げても、また別のユーザーがアップするだけだと、NBC Universalは、なかば、いたちごっこの状態を認めている。
映画会社が多額を投資して製作した映画がこのような事態になるのは、看過出来ないが、一方で、YouTubeは、多大なバズを生むことも事実だ。このために、ハリウッドは、敵対するよりは、なんとかうまくやっていく方法を探っている状態なのだ、という。
音楽業界の教訓を生かすべく、NBC Universal、Warner Brothers Entertainment、20th Century Foxなどのメジャー映画製作会社は、合法的にYouTubeに動画があげられるよう、YouTubeと交渉をしている。
その一方で、YouTubeが昨年9月に約束したフィルタリングソフトを早く完成させるよう圧力をかけてもいる。また、映画製作会社でYouTubeライクなサイトを作ろうという動きもあるという。
もちろん、YouTubeにアップされた動画のうちの多くは、ハリウッドとは無関係である。ハリウッド関係の動画は専門家などによると全体の30%から70%だと推測されるという。
Universal Picturesでは、公開される映画の「デジタルプレスキット」を用意し、YouTubeなどのサイトに送付しているという。「デジタルプレスキット」には、スタジオが認定した写真やクリップ、サウンドエフェクトや音楽ビデオが含まれており、動画サイトで共有することが可能だという。
Universal PicturesのMarc Shmuger会長は、同じ会社内のマーケティング担当と著作権担当との間に軋轢があるとしながらも、これこそが映画マーケティングの未来だとしている。
“If you want to be involved in the cultural debate, you have to allow consumers to be more actively involved,”“That’s a different world order which we are not used to.”
Marc Shmuger, chairman of Universal Pictures「文化的な話題になりたいなら、ユーザーがさまざまに行動できるようにしなければならない。これは、私たちがまだよく知らない世界秩序だ」
Universal Pictures会長 Marc Shmuger氏
一方で音楽業界も動きを見せている。Universal Music Groupは、YouTubeとの取り決めで、一定の金額をYouTubeが支払うことで、動画内での音楽使用を認めている。動画1本あたりの定額か、広告収入のうちの数%か、どちらか多い方をUniversal Musicは手に入れることができるという。
しかし、すべての動画が著作権的に簡単なものばかりではない。さまざまな映像や音源から新しい「作品」を作り出す、いわゆるMash-upは、もっとも複雑だという。
去年の3月にアップされた動画は、20th Century Foxの映画“Napoleon Dynamite(邦題:バス男)”からの場面を、Eminemの“Lose Yourself”(映画「8マイル」より)にあわせて編集している。(この動画は、これまでに6万回視聴されているという)
20th Century Foxによると、この動画の中で使われている"Napoleon Dynamite"の使用料は支払われていないというが、実は、取り下げ要請も行っていない。
“We are not in the business of just saying no, but we do consider it unauthorized use”
Ron Wheeler, a senior vice president of content protection at Fox Entertainment Group「私たちは、ただ、ノーというだけの商売ではないのです。もちろん、非認可の使用だとは認識していますが」
Fox Entertainment Groupコンテンツ保護担当上級副社長 Ron Wheeler氏
ただし、記事では、今後、ハリウッドが「ノー」という場合が多くなるだろうとしている。Fox社は、Mash-upを作る人に理解してもらえるガイドラインを作ろうとしているという。
記事は、The Directors Guild of Americaが、作品のいかなる非認可使用にも断固戦う姿勢だとすることに触れた上で、12月中に完成するとしたYouTubeのフィルタリングソフトがまだ開発途上であるとことをもう一度指摘している。
動画の取り下げ要請ゲームは、そんなに長くは続かない…。
Hollywood Asks YouTube: Friend or Foe? - New York Times
napoleon dynamite - lose yourself - YouTube