ロックバンドNIN(Nine Inch Nails)の音楽性は、正直よく知らない。しかし、これまでのロックバンドの枠組みを超えて、「面白いこと」をするバンドとしては気になる存在だった。
2005年4月に、"The Hand That Feeds"という曲をMacのGarageBand仕様で、マルチトラックを公開した時には、その試みに感心したし、実際に、自分なりのリミックスなどもしてみた。
さて、そのNINだが、先週に発売されたアルバムのプロモーションは大変手が込んでいて、もやはプロモーションではなく、その手法自体がアートなのではないか、とさえ思う。
今年に入って行われたコンサートでは、Tシャツにシークレットメッセージが入っており、これを解読すると、I am trying to believeという文章が浮かび上がる。これは、シークレットサイトiamtryingtobelieve.comのURLとなっていた。また、コンサート会場のトイレには、USBメモリーが隠されており、この中には、未発表曲のMP3ファイルが収められていた。
NINコミュニティは、シークレットメッセージを解読したり、楽曲が交換したりと、盛り上がっていったという。
ちなみに、別のTシャツには、電話番号がコーディングされており、その番号にかけると、新曲のさわりが聞けたという。
こうした仕掛けが行われてきた中で、先週、アルバム"Year Zero"が発売された。もちろん、こののCDにもある仕掛けが施されていた。
"Year Zero"のCDの表は通常は、黒いが、プレーヤーに入れると、温度に反応してCDの表面が、黒から白に変わる。そして、その表面には、これまでは見えなかった0と1で構成されたコードが浮かび上がる。それを、解読すると、exterminal.netという文字列になり、これがシークレットサイトのURLになっている。このサイトには、(当然)シークレット曲が収められてる。
こうしたシークレットサイトは、これまでにわかっているだけで、31を超えており(!)、もはやネットプロモーションの域を超えているといえよう。
アルバム"Year Zero"はコンセプトアルバムになっており、近未来が舞台になっている。
…西暦2009年、ロサンジェルスに劣化ウラン爆弾が投下、アメリカは、報復として核攻撃をしかけ、世界は混乱状態に。2018年には、ついに自由選挙はなくなり、2019年には、シアトルが生物兵器テロの標的に。混沌とした中、2022年、アメリカと連合国は新しい暦を採択し、この年がYear Zeroに。その年、最初の"プレゼンス"が目撃された…。
これらの手法は、現実とゲームの世界を融合させた"Majestic"を彷彿とさせる。("Majestic"のプレーヤーは、ゲーム内の主人公から"本物"の電話がかかってきたり、Faxが送られてくるなど、あたかも「ゲームの世界が現実に溶け出してくる感じ」が仕掛けがされており、Alternate reality gameという分野のハシリと言われている)
いずれにせよ、ただCDが売れないと嘆くのではなく、ファンを巻き込んで徹底的に飽きさせない手法によって、CDの購買につなげるようとする努力は、賞賛に値する。
ちなみに、今回のアルバム"Year Zero"からは、"Survivalism"という曲がGarageBand用のマルチトラックファイルとして公開されており、今後数か月の間に、今回のアルバム全曲をGarageBand形式で公開するという。
sta la sta - Nine Inch NailsのCDに隠された秘密のコード
nine inch nails: year zero ※GarageBand形式楽曲ファイルの配布等
Nine Inch Nails 'Zero' in on bleak future - USATODAY.com
Cryptic Web sites build buzz for Nine Inch Nails - CNN.com
Nine Inch Nails creates a world from 'Year Zero' - POP ALBUM REVIEW - Los Angeles Times
うちはこのCD3枚買いましたよ。2枚は未開封にしてあります。初版collectibleな価値が付きそうなので...
Posted by: Takashi | April 24, 2007 at 07:07 PM
トラックバックさせていただきました。
マリリン・マンソンもアルバム「Mechanical Animals」や「Holy Wood」ではこの手のプロモーションをやっていましたね。あれもアルバムのストーリーに関連した映像が隠しサイトで観られるなどというものでした。
Posted by: ParanoiacJokerman | May 20, 2007 at 12:18 AM