Googleでは、エンジニアが就業時間の20%を自分が興味のあるプロジェクトのために使うことが奨励されている、というのは有名な話で、その"20%"での成果によって、GmailやGoogle Newsが誕生した。
20%といえば、週5日のうちの1日に相当する。週1日好きなことに充てられるというのは、もちろん、かなり羨ましい環境ではなる。
あることに興味を持ったエンジニアが、20%の時間を使ってコツコツと開発をし、それに興味をもった人を巻き込んで、α版などを使ってもらって、出来が良かったら社内のより多くの人々が使い出し、やがて、世の中にもβ版として出そうということになる…。
しかし、興味のあることが、将来の製品でない場合は? たとえば、組織横断的に、何を改善したい場合など?
GoolgeのエンジニアであるBharat Mediratta氏による"Google Way"というNY Timesの記事で、そうした組織横断型な"20%"の使い方が書かれていて面白い。
記事によると、組織横断型な場合、"Grouplet"と呼ばれる小さなグループを自発的に組織していくという。
たとえば、"agile programming"(アジャイルソフトウェア開発・迅速かつ適応的にソフトウェアを開発する軽量な開発手法)を社内に広めたい場合、Agile groupletを組織し、“agile programming”を広める活動として、“Agile Office Hours”をつくり、その時間帯は、“agile programming”について、何でも質問できるようにしたり、書籍を手渡したり、社内レクチャーを行ったりするという。
また、Googleのように速い速度で成長している企業では、えてして、小さな事柄が見過ごされてしまい、やがてそのことが悩みのタネになる場合があるという。
それを修復するために、Fixit groupletがあり、さまざまな「Fixitデー」というものが開催されるという。
たとえば、社内ドキュメンテーションを行う、Documentation Fixit、顧客を悩ます小さなバグを修正する、Customer Happiness Fixitなどなど。
これらのFixitデーは、参加してくれたエンジニアへのご褒美として特製Tシャツやギフトも用意されるという。
自身もGoogleのエンジニアであるBharat Mediratta氏は、自分の20%でTesting groupletというのを行っているという。これは、コードを書く一方で、自動的にテストを行うプログラムを作ることを推奨し、デバッグに当てる時間を少なくしようとするものだという。
記事では、Testing groupletがより多くのエンジニアに浸透するために、あの手この手を考え出した様子が書かれている。
Testingの成功事例をチラシにしてトイレに掲示したりもしているという。トイレのチラシは、都度新しいものに更新され、いまでは世界500か所のGoogle内トイレに掲示されているという。
Testing groupletには、ブログもあり、Google社外にも公開されている。
(Google Testing groupletの"ロゴ")
Googleでの働き方で、20%は自分のプロジェクトに使うことができるというのは知られているが、それが、社内改善運動的なことにも使われていることがわかる貴重な記事といえる。
それにしても、記事を通して伝わるのは、いわゆる会社、という堅苦しいものではなく、何かサークルのような自由な雰囲気である。その自由な雰囲気の中で、組織全体を改善するための方法論として、"20%"のあり方とgroupletの考え方は参考になる。
The Google Way: Give Engineers Room - New York Times
Google Testing Blog: Introducing "Testing on the Toilet"
Agile Adoption at Google -agile2007.org (PDF)