デジタル音楽関連のエントリーが続くが、数日前にTechCrunchで紹介されたYahoo! Music Vice PresidentのIan Rogers氏の"Digital Media Forum West"でのプレゼンは痛烈である。
痛烈と感じるのは、ユーザーまでもが、業界の都合を半ば黙認して受け入れてきたからなのだが、
Napster時代にWinampで働き、その後Yahoo! Musicで音楽配信の渦中にいる人物が、ある種シビれを切らしての発言を行っている。
Ian氏は、先ごろスタートしたAmazon MP3が本来あるべきデジタル音楽販売サービスの姿である、としている。それにしても、1999年から実に8年もかかって、DRMなしのMP3にたどり着いたということに、Ian氏は愕然とする。
"How much opportunity have we lost in those 8 years?"
(いったい、この8年の間にどれだけのチャンスを失ったというのだろう?)
ウエブには不便なインターフェイスが生き残る隙間はないし、ウエブでは巨大なスケールでマネタイズするしか生き残ることができない、とした上で、自らのYahoo! Musicが業界の都合を聞いたために、いかに、ダメなサービスに成り下がるしかなかったかを吐露している。
Yahoo! Musicはこの問題のいい例だ…Yahoo! Musicはウェブ上のナンバーワンの音楽サイトで、月間何千万という訪問者がいる。しかし、定額音楽ダウンロード市場は全部あわせても(つまり、 Rhapsody、Napster、Yahoo!などをすべて合計しても)数百万ドルにしかなっていない―7年間、各社がプロモーションに努力した結果がこれだ。
Yahoo!Musicとその他のコンテンツ・サービスの使い勝手を比較するとそれも驚くにはあたらない。(中略)
Yahoo!はこんなバカバカしいインターフェースを作りたくはなかったのだが、ライセンス条項のせいでこうする他なかった。
「コンテンツに関する多少の制限」から消費者にそっぽを向かれる不親切な、非ウェブ的なサービスへはほんの一歩にすぎない。
(TechCrunch Japanese - YahooのIan Rogers、音楽産業に苦言― 「不便の押し付けはいいかげんにしろ」 より)
そして、もう金輪際、ユーザーのためにならない仕様には与しないことを宣言している。
I’m here to tell you today that I for one am no longer going to fall into this trap.
If the licensing labels offer their content to Yahoo! put more barriers in front of the users, I’m not interested. Do what you feel you need to do for your business, I’ll be polite, say thank you, and decline to sign.
I won’t let Yahoo! invest any more money in consumer inconvenience.
I will tell Yahoo! to give the money they were going to give me to build awesome media applications to Yahoo! Mail or Answers
or some other deserving endeavor. I personally don’t have any more time to give and can’t bear to see any more money spent on pathetic attempts for control instead of building consumer value.
Life’s too short. I want to delight consumers, not bum them out.
(Convenience Wins, Hubris Loses and Content vs. Context, a Presentation for Some Music Industry Friends at FISTFULAYEN より)
最後の「人生は短すぎる。わたしは消費者を喜ばせたいのであって、落胆させたいのではない」というのは、力強いメッセージだ。
(Ian氏のプレゼン資料より)
ちなみに、iTunesについてIan氏は、
"iTunes is a spreadsheet that plays music"(iTunesは音楽を再生するスプレッドシートにすぎない)
と一刀両断。
というのは、そこには、誰がドラムを叩いているかといった音楽のコンテクストがそこにないからだとしている。
Ian氏は、音楽はコンテクストとともあるべきもので、この5年間は、デジタル音楽にコンテクストを与えるサービスを開発する時間にしたいとしている。
TechCrunchの日本語版でも一部訳出されているが、ここは、Ian氏の原文をぜひ。
曲がりくねった道をなんとかやり過ごせば、本来望んでいた場所にいずれ到達できる・・・。そんな想いで、時間だけがいたずらに過ぎていく現代において、Ian氏のメッセージは、業界を超えて響くものがあるように思えてならない。
TechCrunch Japanese - YahooのIan Rogers、音楽産業に苦言― 「不便の押し付けはいいかげんにしろ」
TechCrunch - Yahoo’s Ian Rogers To Music Industry: “Inconvenience Doesn’t Scale”
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