毎年恒例のSXSWは結局、女性雑誌記者による若きFaceBook CEO Mark Zuckerbergとのステージトークが不満足なもので終わったという話題だけが目立ち、なんだかな、と思っていたら、ちょっと面白い記事が出てきた。
これは、AppleのシニアエンジニアリングマネジャーのMichael Lopp氏がSXSWのパネル"Blood, Sweat, and Fear: Great Design Hurts"で語ったものをBusinessWeekがまとめたもの。クリエイティブをどのようにマネジメントしているかが垣間見れる。
以下は、例によってB3 Annex抄訳。
Apple's design process by Business Week
- 完璧なモックアップを作る(Pixel Perfect Mockups)
手間と時間はかかるが、早い段階で、「完璧なモックアップ」を作ることで、すべての曖昧さがなくなり、結果あとで修正が必要なくなる。
- 10から3へ 3から1へ(10 to 3 to 1)
アップルのデザイナーは、新しい機能についての10のまったく違うモックアップを作る。制限を設けずに10をデザインし、仔細に検討した後、それを3の候補に絞り込む。さらに数か月検討した後に、強固な最終案に行き着く。
- 2つの正反対のミーティング(Paired Design Meetings)
毎週、チームは2つのミーティングがあり、1つはブレイ ンストーミングで、制約などを無視して自由に考える。Lopp氏の表現によると、「クレージーになる」場。一方で、もうひとつの会議は、プロダクション会議で、さきほどの会議の正反対なもの。
ここでは、デザイナーとエンジニアはすべての事柄の具現化について見極めることが要求される。クレージーなアイディアをどう実際に動くものにするのかが問われる。このやり方は、どんなアプリであっても、開発の期間を通して繰り返し行われる、という。
- 「子馬がほしい!」を避けるために(Pony Meeting)
シニアマネジメント層が加わる会議では、さまざまな要 求がされ、WYSIWYGじゃなきゃイヤだとか、メジャーな ブラウザには対応してほしいとか、会社の精神を反映してほしいなどいろいろいわれる。
Lopp氏は、これは、会議で「オレは子馬がほしいな! だろ? 子馬、サイコー」といわれようなものだ、という。問題は彼らがほしいものを単に挙げているだけで、間違っていたとしても、彼らが給与を支払っていることから、あまり無碍にできない点だ。
これを解決するために、Lopp氏は、前述の現場による2つの正反対の会議で出たアイディアを、シニアマネジメントにあらかじめ見せることだ、という。というのは、そのアイディアの中の1つは、彼らの夢にまで見た「子馬」かもしれないのだ。
2つの正反対の会議で出た「子馬」(アイディア)は、デザイナーとエンジニアが実現化について考えを巡らせているものであるため、後々に大きな問題に発展することは少ないという。
こう見てみると、Appleじゃないとできないことはないように思える。
しかし、実は「クレージーな会議」と「実現化の会議」を開発期間中、繰り返すというのは、並大抵のことでない。
開発プロセスが終盤に向かうにつれ、さまざまな力が「収斂」する方向に向かい、「拡散」することはないのは、多くの人が知っていることだ。この「収斂」モードでも「拡散」を求めるのが、Apple流のクリエイティブということか。
Lopp氏が実際に語った様子は、いまの時点ではネットにはアップされていないようだ。
SXSW2008のそのほかのカンファレンス動画はこちら、podcastはこちらで、ゲットできる。
また、Lopp氏のブログ"Rands In Repose"では、プレゼンの準備についての心がけなど面白いエントリーが読める。
Tech Beat Apple's design process - BusinessWeek
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