NY大学教授で、"Here Comes Everybody”の著者であるClay Shirky氏のTED@Stateでの講演が面白い。
TED@Stateは、アメリカの国務省で開催されたTEDで、Clay Shirky氏のほかにWhole Earth CatalogのStewart Brandらもトークしている。
Clay Shirky氏の講演では、ケータイ電話などで写真を撮ることで大統領選の投票を監視するアメリカ市民の動きを紹介し、同様の動きが、アフリカのウガンダでもあったことを指摘。ウガンダでは写真ではなくショートメールでの市民監視だったが実は、ウガンダのほうが動きとしては早く(2007年)、先進国であるアメリカは、発展途上国の動きを真似したものだという。なぜ、そういうことが可能になるか。それは、すべてが技術によって規定されるのではなく、社会性(ソーシャル)に規定されるからだという。技術的にはつまらなくなった段階で、はじめて社会的には面白くなるのだともいう。
Shirky氏はさらに、今、メッセージを発信したいと思う組織は、20世紀のメディアモデル(一度に大勢の人に伝える)
から脱却し、大勢から大勢へと情報が伝えられるモデルに慣れるべきだと説く。これまでの、プロが発信し、アマチュアが受信するモデルではなく、情報の受け手は発信者になるモデルへと移行するべきだとする。
その中には、旧来的には受け入れられないシチュエーションがあるとしながら、オバマ大統領の大統領選での、ある法案への賛成票投票をめぐるエピソードを紹介している。MyObamaのサイトのコミュニティでは、その法案への反対が圧倒的ではあったが、オバマはそれらの書き込みを無視したり、削除したり、ブロックしたりせず、あなたたちの意見は理解したが、これについては自分は賛成に回るということを丁寧に、説明したのだという。
多対多のコミュニケーションモデルでは、さまざまな意見が戦われ、旧来モデルになれていると、なかなか真正面に対峙できないが、偉大なコミュニケータをめざすオバマの行動は、一見当たり前に思えるが、実践が難しい新しいメディアモデルでのコミュニケーションのあり方の規範のひとつになりうるものだといえる。
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