Steve Jobsが6月6日(現地時間)にAppleのWWDC2011で、発表した次期OSのLionや、iOS5、iCloudの中で、特に触れたいのはやはりiCloudである。
これまで、Appleは未来は確実にインターネットにあると感じながらも、一方で、Macを販売するパソコンメーカーであったために、必ずマックが介在する形でしか、サービスを提供してこなかった。もっとも象徴的なのが、iPadだろう。iPadはネットブックを凌駕するといわれ、実際にそうなったが、箱から出して、最初に行うのは、パソコンとのシンクである。誰もがパソコンなしであるべきだと思いながら、渋々受け入れていたことだった。iPodであっても、iPhoneでも同様である。マックが(多くの場合iTunesが)ハブになってきた。
そもそも、Steve Jobsがデジタルハブ構想を提示したのは、2001年1月のMacWorld(動画)である。
(デジタルハブ構想を発表するSteve Jobs 2001年1月)
このとき、Jobsは、パソコン市場はもう行き詰まっているという声に対して、パソコンは、デジタルライフスタイルという第3黄金期を迎えようとしているとした。さまざまなデジタルデバイスが登場しているが、それら単体ではできないことが多くあり、まさにデジタルデバイスに付加価値をつけるのが、マックであり、それを「デジタルハブ」構想と呼んだのだった。
それから、10年をかけて、マックは甦り、いまではシェアも取り返している。2001年から2011年までの10年間をかけて、Appleは、iPod、iPhone、iPadと発表し続け、社名からComputerさえもとってしまった。そして、iCloudである。
(iCloudを発表するSteve Jobs@WWDC2011)
iCloudは、MobileMeで実現していた連絡先、カレンダー、メールだけでなく、アプリ、iBook、バックアップ、ドキュメント(Pages、Numbers、Keynote)、写真、音楽をネット上で保存し、iOS間で自動共有できるというものである。これまでも、クラウドサービスはあったが、それはネット上のハードディスクの域を出ていなかった。Appleが今回の発表が画期的であるとすれば、ネット上のハードディスクを超えて、アプリごとにクラウド対応したということだろう。これによって、パソコンにあったファイルシステムというものを意識しなくてもよくなった。
音楽については、iTunesで購入した楽曲はほかのデバイスでもダウンロードできるだけでなく、CDからリッピングした楽曲についても、同様に扱える.(iTunes Match) iCloudは基本は無料だが、iTunes Matchは年間24.99ドルになっている。(AppleはiTunes in the cloudを実現するために、4大レーベルと協議し、おそらく巨額を支払っている。)また、写真については、フォトロールにあるものは30日間、iCloudに存在する。このあたりの制限は、データセンターの容量を熟慮した結果だろう。5GBが無料(音楽やアプリ、写真ストリームは含まれず)
購入したテレビ番組や映画はどうなのか。これについては、今後当然、そういう声があがってくるだろう。
すべてをクラウドに収める、という大きな道筋はみえた。デジタルハブはいまやパソコンからクラウドに移ったのだ。その意味で、iCloudによって、Appleは真にパソコンメーカーではなくなったと言っていいだろう。