アメリカの高速道路の標識に使われているフォントが50年ぶりに変わろうとしている、という。
NY Times日曜版のMagazineには、新しいフォント"Clearview"の開発と、実験、そして採用までの長い道のりが描かれている。
"Clearview"という新しいフォントは、環境グラフィックデザイナーのDon MeekerとフォントデザイナーのJames Montalbanoによって考案された。
(上2つが従来のフォント。下の4つがClearview。青い部分がClearview従来フォント、白は従来フォントClearview。Photo: Courtesy of Don Meeker)
フォントはイメージの核となるもので、全米の高速道路の標識のフォントを変えるということは、取りも直さずアメリカのイメージを変えることだという。
この"Clearview"というフォントはどのように開発されたのか? いくつかの偶然によって導かれた面があるようだ。
元々Meeker氏は、オレゴン州からの依頼で、同じ標識板の大きさにより多くの情報を盛り込むにはどうしたらいいかを研究していた。
標識板を大きくすることは、莫大なコストにつながるだけでなく文字を詰め込めば、高速移動時に読めなくなる、という矛盾を持っている。
一方、その頃、連邦高速道路管理局では、別の問題を抱えていた。夜間での文字判読率が問題になっており、ヘッドライトが文字に当たるとハレーションを起こして文字は読めなくなってしまうのだ。なんとかしてこれを解消できないか。
ほどなくMeeker氏は3Mにアプローチし、情報を多くすることと文字判読率向上という二つのプロジェクトを共同で研究できないか、打診した。
その後、さらなる紆余曲折とさまざなな実験を経て、新しいフォント"Clearview"が誕生することになる。
従来のフォントから"Clearview"への主な修正点は、
- 線を細くする
- 小文字のaやeの円形空間を大きくする
- 小文字の文字の高さを高くする
である。
こうすることで、高速移動時でも判読の時間が短くなり(つまり、判読にかかる時間が同じなら、さらに多くの情報を掲載できる)、また、夜間や日の出時などに、文字が光の反射で判読できないことが減ることがわかった。
(従来フォントのFHWA Standard Alphabet E-modified 大文字と小文字の高さ比率は4:3)
(新たに開発されたClearview 5W 大文字と小文字の高さ比率は4:3.28と小文字の高さが高くなった)
(いずれも、Clearview Typeface Supplementより)
今後、10年以上かかって、全米の高速道路の標識のフォントが"Clearview"へと静かに置き換えられていくという。
The Road to Clarity - New York Times
Slide Show - What's Your Sign? -The New York Times
Clearview Typeface Supplement - Federal Highway Administration (pdf)
<追記 2008年8月31日 AM2:52>
記事中のキャプションで、Clearviewと従来フォントの記述が逆になっていたのを修正しました。
ご指摘ありがとうございました。