今週、サンフランシスコで開催されていたイベント"Google I/O"で、Googleは、メールやIMなどに代わる次世代コミュニケーションプラットフォーム"
Google Wave"を発表した。"Google Wave"は、いまメールが発明されたとしたら、どういうものになるかを念頭に置いて開発されたといい、リアルタイムで、コラボレーションをどのように行うか、考えられている。Google Waveは"Google I/O"に参加した開発者に公開され、今年後半に一般でも利用できるようになるという。
(Google Waveの画面イメージ)
Google Waveを開発したのは、Google Mapsを開発したLars RasmussenとJens Rasmussen の兄弟開発者。オーストラリアで1年半前から開発を始めた。現在では50人程度のエンジニアが開発に携わっているという。
最近、Real-Time Webという概念がよくいわれている。これは、TwitterやFacebookのステータスアップデートがもたらした、いますぐに情報を伝える形でのインターネットのあり方である。これまでのウェブは、書かれたタイミングと読まれるタイミングは非同期であることが前提となっていたが、その同期のズレが、どんどんなくなってきて、リアルタイムに近づいている。今回発表されたGoogle Waveは、そんなReal-Time Webの動向をよく押さえており、今後の展開が注目される。
・メール、IMといったコミュニケーション関連のアクションを、これまでのように別々のアプリケーションを起動するのではなく、Waveというひとつのアプリの中で実現する。
・ 2人のやりとりに新たに1人加わったとき、これまでの会話の流れがわからないことや、メールの返送時に、2人でやりとりしているときのメールに返信することで新しい人のメルアドが忘れられてしまうことなどが往々にしてあるが、Waveでは、2人のこれまでのやりとりがプレイバック機能で、再生することができる。
・Google Waveは、ブラウザ内で動くように作られている。すべてはブラウザ内での体験。デモではChrome、Firefox、Safariを使って行われた。
・Waveの自分のメンバーに、チャットのやりとりをしながら、写真をIMスレッド内的に、共有できる
・チャットのやりとりには、blogボット参加者にすることができ、そのボットが自動的に、ブログにアップロードすることも可能。
・Google Mapsをウェブページにembedできるように、Waveのやりとりをブログにembedできるようにできる。また、embed機能を使うことでWaveそのものをOrkatのようなSNSの内部に作ることもできる。
・モバイル(iPhone、Android)でも動作。
・文書を複数の人間でリアルタイムで編集すること(collaborative editing)も可能。バージョン管理については、オープンソースのアプリケーション開発におけるコードの共有の仕方にヒント
・Waveの機能を拡張するextentionも開発可能。デモでは、スペルチェック機能(spelly)、文字列の自動リンク付与機能(linky)、Wave内文書での検索エンジン呼び出し機能(searchy)などを紹介した。
・リアルタイムコラボレーション機能を活用して、SUDOKUやチェスといったゲームも共有でき、自分のWaveのメンバーに投票させる機能(polly)も可能。
・外部のコミュニケーションサービスとの連携も可能で、デモでは、Twaveと呼ばれるtwitterとの連携を実現する機能も紹介された。
・また、Waveでチャット的にやりとりする際に、翻訳ボットを通して、自国語⇔外国語の同時翻訳も可能。デモでは英語⇔フランス語でのリアルタイム翻訳が紹介された。
・Waveのコードはオープンソースとして公開され、別の企業が自社版のWaveを開発、公開することも可能。ただし、メールがどんなクライアントであっても、送受信ができるように、Waveもだれがクライアントを開発してもいいが、相互でやりとりできるようにする必要がある。(プロトコルなども公開予定)
メールは最も使われているアプリケーションでありながら、90%がスパムといわれ、改善の必要がありながらGmail以外には、メールを再発明しようという壮大なプロジェクトはなかったといっていい。Google Waveは、メールの非同期、IMの同期性をひとつのアプリケーション/サービスで切り替えられるというアプローチで、インターネットでのコミュニケーションを見直そうというものだ。その意味で、あまりに壮大な野望に思えるが、ひとつの挑戦として大いに評価したい。