NY Times Magazine恒例の第8回"The Year in Ideas"が公開されている。
これは、この1年間に登場した新しい考え方やアイディアの中から、今後私たちの生活や仕事を変えるかもしれない動きを紹介する企画。
今年は54のアイディアが紹介されているが、その中からほんの一部を紹介。
○バス待ちの法則 Bus-Wait Formula
待っているバスがなかなか来ない。一区間だし、歩くか。そうして、あなたはバス停を後に歩き出す…。
ハーバード大学とカリフォルニア工科大学の学生らの研究によると、こうした「バス待ち」においては、結局、バス停で待ち続けた方が、目的地に早く着くのだという。
面白いのは、その理由に、バス停から歩き出した後も、ときどきバスが気になって後ろを振り返ったりする時間が、当人が思っている以上に長く時間のロスにつながっているというのだ。もちろん、目的地が近い場合はこの通りではないが、もしバスが待てずに歩き出したら、バスのことは忘れて、まっすぐ歩き続けるのが正解のようだ。
8th Annual Year in Ideas - Bus-wait Formula, The - NYTimes.com
○気持ちと温度の相関関係 Cold-Shoulder Science
複数の研究によると、人間の気持ちと温度というのは私たちが思っている以上に関係があるという。
まず、トロント大学の研究者によると、社会的に疎外された経験を思い出すように言われた被験者は、社会的に受け入れた経験を思い出すように言われた被験者よりも、その部屋の温度を4度以上低く見積もったという。また、ボール投げゲームで、無視された被験者は、ゲーム後に暖かいコーヒーやスープをほしがったという。
別の研究でも同様の傾向が出ている。コロラド大学ボルダー校とイェール大学の研究者による実験では、実験室に向かう途中に、熱い飲み物あるいは冷たい飲み物を、偶然を装って一瞬だけ持ってもらった。熱い飲み物を持った被験者は、実験室にいた評価対象人物を好人物と考え、また冷たい飲み物を持った被験者は、評価対象を、それほど好人物とは思わなかったという。
人間である以上、身体状況や環境が思考に影響するのは当然だとしている。
記事では、9月29日にニューヨーク株式市場が歴史的な下げ幅を記録する「激寒」な状況に、S&P500銘柄のうち、1つだけ株価があがった銘柄があったとして、
それは、「キャンベルスープ社」の株だった、と結んでいる。
8th Annual Year in Ideas - Cold-Shoulder Science - NYTimes.com
○ゴールキーパーのカガク Goalkeeper Science
サッカーにおけるペナルティキックでゴールキーパーの最適な戦略は何か? イスラエルの研究者によると、
ゴール枠の中央に立って左右には動かないこと、だという。左に来ると思って、左に飛んだら、中央に決められた、といったシーンは、これまでに何度も見てきた。
でも、データでは、中央にいるのが一番いいのだという。研究者たちが286のペナルティキックを分析した結果、94%はキーパーが中央にいたままの方がボールをとめられる可能性が高かったのに、左または右に動いたのだという。
では、なぜゴールキーパーは、ボールを止める確率が低くなるにもかかわらず、「カン」を働かせて動くのか? それは何もしていないと思われたくないからだという。
これは、ある意味、ほかの場面にも応用できそうなカガクではある。
8th Annual Year in Ideas - Goalkeeper Science - NYTimes.com
○時間彫刻 Timesculpture
この秋、少し奇妙な東芝のCMがアメリカなどで登場した。制作者が「時間彫刻」と呼ぶ手法を使ったこのCMは、要はマトリクスの有名なBulletTimeを支えたいくつもののスチルカメラをムービーカメラに置き換えたものだ。
正直CMそれ自体はそれほど面白くないが、この手法の応用方法はまだまだ考えられそうだ。
8th Annual Year in Ideas - Timesculpture - NYTimes.com
正直、これまでの"Year in Ideas"に比べると、全体的に小ぶりというか、ぱっとしたものがない。
また、ウェブのデザインを変えたために、やや見づらく、また直接リンクも容易には張れない形になっている。こういう時代だからこそ、アイディアの力が生きてくると思うのだが。
Year In Ideas 2008 - Interactive Feature - NYTimes.com
B3 Annex: NY Times恒例の"Year in Ideas"2007年版発表 (2007年12月17日)