結局、アメリカに来るな、ということなのか?
英Guardian紙に掲載された記事が伝えるところによると、アメリカに入国する際に、検査官にパソコンの中身を探られ、データをコピーされる恐れがあるという。
これは、そもそも4月下旬に出た米連邦控訴裁判所への訴えに対する裁定によるもので、裁定では、アメリカの入国検査官は、何かに対する特別な嫌疑がなくても、入国者のパソコンを捜索することができる、としている。
事の発端はこうだ。
2005年夏にアメリカ人男性が、ロサンゼルス国際空港に到着、入国審査の際に、係員が渡航先と期間を聞いたところ、フィリピンに3週間滞在した、と返答。
係員は、男性の荷物のパソコンを起動するように命じ、パソコンの中身を見たところ、写真フォルダの中に2枚の若い女性の写真があったことから拘留された、という。
これに対して、不法な捜索であるとして第9巡回区連邦控訴裁判所に訴えたところ、入国検査官は、特別な理由がなくても、パソコンの中身を捜査し、データをコピーすることができる、との裁定を出した。
EFF(Electronic Frontier Foundation)などは、これは明らかに、合衆国憲法修正第4条(不法な捜索や押収の禁止)違反であるばかりか、プライバシーの侵害などさまざまな問題があるとしてあるとして、議会に対してまずは公聴会を開くように要請している。
荷物を探られるのは、そもそも気分のいいものではないし、さらにパソコンの中身を見られるというのは、やましいものがなくてもできれば応じたくないのが人情ではないか。パソコンには、個人的な情報だけでなく、企業の取引上のデータや、社外秘の書類なども入っている。
これが令状などがなくても入国管理官によって、捜査できるというのは、あまりに問題を含んでいると言わざるを得ない。
また、パソコンの捜索に当たっては、どういう手順で行うのか、取得されたデータはどう管理されるのかについては、一切公表されていない。
現実に、アメリカ入国時に、パソコンを捜索される可能性がある現在、私たちはどうしたらいいのか?
英Guardian紙では、アメリカに持ち込むパソコンは、出荷状態にしてクリーンにすることを勧めている。
仮にハードディスクを暗号化していても、「パスワードは?」と聞かれるのがオチだからだ、という。
(この場合、もちろん、パスワードを教えないこともできるが、長時間足止めされたり、最悪、入国を拒否されることもあるという)
必要なデータは暗号化して、ネット上の「クラウド」に格納してしまう。持ち歩く際は、USBメモリーに入れて、パソコンとは別のバッグなどに入れる。
注意しなければいけないのは、対象がパソコンだけではない点だ。捜索についてはPDAやiPhoneなどあらゆるデバイスに及ぶという。
いずれにせよ、まずは、こうした自衛策が必要のようだ。
#私たちの住む世界は、こうして、静かに、しかし、確実に住みにくくなっていく。自由で住みやすい世界を維持するには、このような動きに対しては、一つ一つ声を上げていくしかないのだろう。
Read me first: Taking your laptop into the US? Be sure to hide all your data first - The Guardian
Protecting Yourself From Suspicionless Searches While Traveling | Electronic Frontier Foundation
Electronic Border Searches: An Open Letter | Electronic Frontier Foundation
Judge: Customs May Search Laptops Without Warrants - News and Analysis by PC Magazine
Law Blog - WSJ.com : Ninth Circuit: No Fourth Amendment Violation in Laptop Search
UNITED STATES COURT OF APPEALS FOR THE NINTH CIRCUIT(pdf)