さて、このセミナーでのデモの面白さは、テレビやPS3、PSP、ケータイというこのサービスの売りであるマルチなデバイスで、ということを丁寧に見せたところだろう。紙の上では、さまざまなデバイスで、と書きがちだが、実際に、それぞれのデバイスに最適化した画面を作るというのは、やはり大変だと思う。
(ブラビアTVにアプリキャストでLife-Xを表示)
(テレビ、PS3、ケータイでデモする2人)
デモでは、担当した2人による投稿の実際も行われ、また、セミナー参加者がケータイからその場で写真を撮って、Life-Xに投稿することも行われた。木目調の画面に、今撮られた写真が次々と表示される様子はなかなか面白かった。
セミナー2:brancoとPetamap
brancoは、1年ほど前に始まったPC向け動画チャンネル。オンディマンドではなく、テレビのように編成をして、番組に出会えることを狙っているという。ユーザーは光フレッツに入っていれば無料で見られる。
現時点で7チャンネルあり、9月22日には、「手塚アニメチャンネル」が開局する、という。
(brancoのチャンネルラインナップ)
要は、パソコンで昔放送されたテレビ番組がテレビの編成風にパソコンで見られるサービス。
面白いのは、チャット機能があること。ある番組を見ながら、それをリアルタイムで見ている人とチャットができる。
ただ、ニコニコ動画の非同期の動画・テキスト共有がすでにあることを考えると、まるごとの番組で、非同期で、あるシーンでみんながどう思ったか、というのをどう実現するかが、今後の目指すサービスなのではないか、と思った。
http://www.branco.tv/Petamapは、ソニーの地図サービス。
グルメぴあなどの公式データをマッシュアップし、「地図から知図」を目指しているという。サービス開始から1年ほど経過しており、データは20万件に達しているという。
(Petamapで地図上に情報を表示したところ)
(カーナビnav-uでクーポンの使える店を表示)
提携先として、グルメぴあ、GDO、cafeglobe、ホットペッパーなど。Petamapもマルチデバイスから参照でき、PC以外に、PSP、nav-u(カーナビ)、mylo、PS3から地図情報を見られるという。
http://petamap.jp/面白かったのは、X-Radar Ver1.6。これは、Ver1.5が提供されており、そのバージョンアップ版としてVer1.6が現在開発中という。
(開発中のX-Radar 1.6)
X-Radarは、パソコンの無線LAN機能を利用して、半径3キロ以内の店などをレーダー風に探すもの。無線LANレーダー、らーめんレーダー、カフェレーダー、居酒屋レーダーが用意されていて、それぞれ、どんぶりになったり、ビールのジョッキになったりするのが面白い。
ただ、サービス提供者が考えるようにノートPCを街に持ち出して情報を探すかどうかは、ちょっと分からない。早くiPhone Appとして提供すれば、ヒットするのに、と思う。
http://www.jp.sonystyle.com/Taiken/Original/X-radar/
セミナー3:Giga Pocket Digitalの解析技術
実は、このセミナーはあまり期待していなかったが、面白かった。
VAIOは、これまでVideo Audio Integrated Operationの頭文字とされてきたが、この8月、Visual Audio Intelligent Organiserへと再定義された、という。
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200807/08-0716/この再定義のコアの1つがオリジナルソフトのGiga Pocket Digitalである。Giga Pocketはテレビチューナー搭載のVAIOにはおなじみのソフトだったが、それがデジタルチューナー搭載で生まれ変わったということのようだ。ただ、デジタル対応になっただけでなく、嗜好解析ができるようになり、intelligentになったのだという。
(3つのコンテンツ解析エンジン)
このセミナーでは、ソニーが開発した3つのコンテンツ解析エンジンについて説明があった。
-12 Tone Analysis(12音解析)
-Face Recogonition(顔の認識)
-Event Clustering(イベントクラスタリング)
-12 Tone Analysis(12音解析)
12音解析では、たとえば、CDをリッピングした際にGracenoteに接続して得られる音楽の基本的なメタデータ(曲名、アーティスト、アルバム名など)に加える形で、mood、BPM、Chord、Melodyについて、解析する、という。
これらが商品に搭載されたものとして、ウォークマンの「おまかせチャンネル」、VAIOの「Movie Story」などがあるという。要は、AppleがiTunes 8でGeniusで実現しているものと、ほぼ同等と考えていいようだ。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/technology/technology/theme/12tonealalysis_01.html
-Face Recogonition
顔の認識では、顔の位置、パーツ(表情がわかる)、属性(男性・女性、どれだけ笑っている)を解析するという。顔の位置がわかることで、そこにズームインする、といったことが、Movie Storyでは行われている。
-Event Clustering(イベントクラスタリング)
たとえば映像の中から、イベントごとの塊を検地して分割する技術。"Click to Disc"などで使われている。
つづいて、Voyager Engineについての説明。
これは、ユーザーの好みに合わせて、テレビ番組を提示するもので、予約していなくてもどんどん録画してくれるもの。
実は、テレビ番組というのは、嗜好解析に適したものであるという。というのは、テレビ局側が基本となるEPGでさまざまな情報が提供されており、それに番組内で紹介されたショップ情報やCM情報を付加して、メタ情報としているという(これについてはM dataの情報を利用しているとのこと)。そこから、ユーザーが、見る・録る・書き出す・消去する、のうちどのような行動を取ったか、ということで、嗜好を学習している、という。
Voyager Engineにより、これまでのキーワード録画では、SMAPと入れれば、SMAPが出演する番組はとれたが、メンバーが単独で出ているものは録れなかったが、お好み録画では、メンバーも勝手に録画してくれる、ということになるのだという。
Giga Pocket Digitalでは、「必見」「おすすめ」「一見」とラベルをつけているが、面白いのは、「おすすめ」は、なぜおすすめされたのがわからなかったが、Giga Pocket Digitalでは、おすすめの理由を見ることができるという。また、これまでの嗜好から「ユーザーレーダー」なるものも表示され、自分の嗜好をビジュアルに知ることができる。
(自分の嗜好を客観的に見る)
ソニーにとってのウェブサービスの意味
Life-X、branco、Petamapの説明で必ず出てきたのが、なぜソニーが(無償)でこのサービスを行っているか、ということ。ストリンガー会長は、「ソニーの家電の90%はネット接続する」ことを標榜しているいま、ウェブサービスは、「ソニー製品の付加価値をあげるため」の切り札という位置づけになる。しかし、まさにそこに何かカギがあるように思えた。
たとえばLife-Xは、3年ぐらい前には、こうなったらいいなぁ、と思っていたサービスではあるが、どうもワクワクしないのだ。(まだサービスインしていないので、あくまで説明を聞いた時点で、ということ)
ワクワクしない原因、それは、ソニーがやはりメーカーだということがあるのだろう。結局、ソニー製品を売るためにウェブサービスをやっている、ということなのだ。
ウェブ専業の企業が、全身全霊で新しいウェブサービスを打ち出してくるのに対して、何か、ソニーのウェブサービスには、つねに何か裏があるように思えて、そこがワクワクさせない原因なのかもしれない。せっかく、いいウェブサービスがあっても結局、VAIOじゃないと楽しめないんでしょ、とか、うちはブラビアじゃないからね、という受け取られ方をしてしまう。(実際は違っても)
"凄みのあるウェブサービス"といったものを、ソニーに期待してはいけないのだろうか?
(もちろん、これは、ソニーだけの問題ではなく、大企業がネット対応していくときに、発生することだとは思うが…)
Sony Gets a Life-X - BusinessWeekセミナー4:サイバーショットT-77/T-770
光学式手ぶれ補正のカメラで世界最薄、最薄部13.9ミリのデジタルカメラ「サイバーショットT-77」の開発秘話。実際のカメラが配られただけでなく、最初のサイズモックや分解されたパーツなどを手にとって見ることができた。
(世界最薄 サイバーショットT-77)
(T-77の開発当初のモックアップ)
これまでのサーバーショットでは、最薄を実現するために、デザインが犠牲になったり、そのクラスのモデルにはあるべき機能がなかったり、ということがあったという話からスタート。今回のT-77ではデザインも機能も妥協しない、ということが商品企画から技術まで共有され、実現したのだという。
そのために、さまざまな工夫がされている。
- レンズを出すためのスライド機構がある分、そこが出っ張る。そこで中の基盤部分で、そこに当たる部分は、何も配置しない。
- あるいは、レンズ部分のカバーはどうしても、レンズの分だけ出っ張るので、カバーの内側を削っている。
- デザインで、表面はヘアライン加工がされているが、そのヘアライン加工で必要な削りだしまで薄さに貢献している。
個人的には、T-77の兄貴分にあたるT-770に魅力を感じていたが、世界最薄への執念についてはT-77の話に圧倒される。
(T-77の上部パーツを内側から撮影。右側に開閉機構)
(T-77の下部。左側の基盤の一部には何も載っていない。上部と合わさった際に開閉機構の出っ張りを相殺するために何もないという)
で、T-770は、T-77に、さらに液晶の綺麗さと内蔵メモリ(4GB)にこだわったモデル。デザインは、金属をそのまま切り出したイメージ。担当デザイナーは、色バリの中の「グレー」がお気に入りだとか。
(T-770。金属を切り出したようなデザイン)
スマイルシャッターについてもいくつか。去年製品化した際に反響は大きかったが、実際にオンにするまで5ステップもあったのを電源オンでメニューにすぐある状態にインターフェイスを変更。
また、スマイルシャッターは、笑顔は撮れるが、笑顔しか撮れないということに対しては、スマイルシャッターがオンになっていても、ハードシャッターを押すことで、笑顔以外も撮影できるようになったという。
ブロガーセミナーに参加して
参加者数は発表されていないが、おそらく50人~60人ぐらいか。有名ブロガーもちらほら見られた。
意外だったのは、多くの人が一眼レフカメラを持ち込んでいること。すごいなぁ。
ブロガーセミナーは、今回で2回目とのこと、運営はスムーズに行われていた。併設の(というかこちらがメインだと思うが)Dealer Conventionでさまざまな新製品が展示されていて、それが見られるのは貴重ではあるが、すでにニュース系サイトに書かれていることもあり、新しもの好きのB3 Annexとしては、少し残念だったのが正直なところ。
おそらく、プレスでの発表、口コミマーケとしてのブログというすみわけをしっかり考えている、ということもできるが、その枠組みに組み込まれてしまっていることに対する違和感もないわけではない。
とはいえ、こんな長いエントリーを書くことになったのは、開発セミナーがそれなりに面白かったからでもある。
今後も、機会があれば、ぜひ参加してみたい。